手首の使い方(ピアノレッスン編③)

<ピアノ演奏法シリーズ>の第3弾は『手首の使い方』についてです。

 

☆手首の位置☆

前回は<指の形>についてのお話でしたが、<手首の位置>は演奏時の指の形を作る上でとても大切な役割があります。

鍵盤に手を乗せ、第3関節(指の付け根の関節)を一番高い屋根にして手首に向かって低くして行くと、卵(ボール)をつかんだ丸い形になります。

この形をキープして、第1関節(ツメに近い関節)をペコンとへこまさないように関節をしっかり出して打鍵すると、とても良い音が鳴ります。これがピアノ演奏の基本の形となります。

 

この時、ピアノの本体にくっつきそうになるほど手首を下げてしまうと、卵(ボール)をつかんだような丸い手の形が作れなくなり、しっかり打鍵出来ません。手首に負担をかけ、痛める原因にもなります。

 

逆に手首の位置を上げ過ぎると第3関節より手首の方が高くなってしまい、私は『すべりだいの手』と呼んでいるのですが、

「すべりだいの手」では脇も連動して開いてしまいますし、指の付け根から指を持ちあげにくくなるので、小さなお子様の基本練習として大切な<マルカート奏法>がうまくできません。

 

手首は低すぎても高すぎても弾きにくくなります。

手のひらで卵をふんわりつかんだ形になるよう、そしてその卵がつぶれたり落ちたりしないような位置をピアノの先生に見ていただきましょう。

 

☆手首の注意☆

よく打鍵するたびに手首が上下に揺れてしまうお子様がおられますが、このような『手首奏』では、一音ずつ音が切れてしまい、美しいレガート奏法ができません。

手首の上下の振りを使って音を鳴らすのでなく、打鍵は指の独立した上下運動で行います。

第3関節から指を丸く持ち上げるようなイメージでマルカート奏法の練習をしていくと、手首の上下の振りを使わずに指で力強い打鍵が出来るようになります。(単発の和音などをアクセントをつけて強く鳴らす時などは手首の振りを使うときもあります)

 

実は手首を上下に揺らしながら演奏する『手首奏』の癖が一度付いてしまいますと、この癖を直すのに大変な労力と時間がかかります。

ピアノ指導者は、あとで直さなければならないような変な癖をつけないよう、お子様の手首の位置や上下の動きについて、十分気をつけなければなりません。

 

☆脱力☆

さて手首の使い方の大きな役割の一つに『脱力』があります。

 

手首が硬くなり不要な力が手や腕にかからないよう、手首で力を逃がしてあげるテクニックは、重厚な和音の連打や速いパッセージがたびたび出てくるレベルの作品で要求される高度な技法となります。

 

『脱力』はコツというより、根気よく長い時間をかけて練習をしていく中で、各々のタイミングと方法で自然に体得していくテクニックといえるでしょう。

 

 

☆横の動き☆

さて最後にもう一つ、『跳躍進行を助ける横の動き』という手首の使い方があります。

 

指を精一杯広げても届かない音程幅を速いテンポで弾かなければならない時、

しかも指が届かないのにスラーが付いていてレガート奏法を要求されるときは、ペダルで響きが切れないよう補助をしつつ、弾きたい音(鍵盤)に向かって手首を動かし指を持っていきます。

 

とても身近で分かりやすい楽曲を例にとりますと、ソナチネアルバムの第7番1楽章(クレメンティ作曲op.36,no1)の中間部に右手、G音のオクターブ連打が出てきますね。

小学生低学年でまだオクターヴが届かないお子様は、ここで苦労されるのですが、

手首を左右に素速く動かしながら打鍵すると、完全なレガート奏法にはならないものの、テンポ内におさめてオクターヴを連打することが可能になります。

 

今回のブログのアイキャッチ画像は4オクターヴに渡るアルペジオ(アルペッジョ)の練習譜で、ミスタッチをせずに弾き通すのはとても難しいのですが、

<手首と腕>の横の動きをつけることにより、正確なタッチを導いてくれます。

 

 

 

さて、先月よりピアノ演奏の基本について簡単にご紹介してまいりましたが、正しい基本の形が身に付けば、弾きやすい演奏法を各自でアレンジして見出していけば良いと思います。

 

指の長さや手の大きさは人それぞれ違うのですから、演奏法もこうでなければならない~というのはないでしょう。

ただ手首の使い方やコツを知っていれば弾きやすくなることもありますし、

指の基本の形はスポーツのフォーム同様、とても大切です。

 

 

以上、ピアノのお稽古の参考にしていただけたら幸いです。

 

 

「ピアノのお稽古が楽しくて仕方がない~」

「ママから言われなくても自分からお稽古をしたくなる~」

そんなお薬があれば良いですね~

 

弾けるようになれば楽しくなり、楽しくなれば、もっと弾きたくなりますから、

まずは練習あるのみ!でしょうか。

 

ご一緒に楽しくチャレンジしてまいりましょう!(近藤直子)

 

 

 

 

 

(近藤直子)

 

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